幸福とは何か

将来と現在と過去が「幸せ」と感じる理由

「ロード~第二章」にみる幸せとは

前回は、「THE 虎舞竜」の大ヒット曲「ロード 第一章」において、日常に感じる幸せについて書きました。

日常で感じる「幸せ」とは

目次人によって異なる日々の生活の中で感じる幸せについて「日常的な楽しみ」と「やりがい」のバランスをとる人によって異なる快楽とやりがいの比率「幸せ」に優劣は本当にあるのか? 人によって異なる日々の生活の ...

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今回は続編として制作された、第二章「ロード」について触れてみます。なお、サビの部分「何でもないよう事が、幸(しあわせ)だったと思う」の歌詞は前作第一章と同じですが、キーは変わっています。

第二章「ロード」においても「幸せ」に関する歌詞が出てきますので、歌詞で表現された内容に基づいて考えてみたいと思います。

ロード~第二章 作詞:高橋ジョージ 作曲:高橋ジョージ

あの日 あの時 君と出逢っていなければ
こんなに悲しむ事もなかったと思う
でも逢わなけりゃ
もっと不幸(ふしあわせ)だった・・・
どんなに歳をとっても 手をつないでいる
そんな二人でいようと誓った事も
今は昔の 思い出の物語・・・
この道も この車も この情景(けしき)だって
あの夜と同じままさ
ただ俺の横で 眠ってたはずの
君だけがいない・・・

何でもないような事が
幸(しあわせ)だったと思う
何でもない夜の事
二度とは戻れない夜

「幸せになる・・・」と言って
実家(いえ)を出るはずの
朝に君は箱の中 独りぼっちで
花にかこまれ まるでフランス人形
仮縫いのままの 白いドレス似合ってた
俺も白のタキシード
約束してた揃いのリング 冷たい指に飾った・・・

何でもないような事が
幸(しあわせ)だったと思う
何でもない夜の事
二度とは戻れない夜

二人で買っておいた 子供の洋服も
袖を通さないままに おなかの上に
そっと重ねた 生まれ変わって欲しいと・・・
季節はずれの雪に没れたバージンロード
どこまでも続く長い人の列は 君と最後の
お別れに来ていたね・・・
あの日 あの時 君を失ってなければ
こんなに悲しむ事もなかったと思う
でも逢わなけりゃ もっと不幸だった・・・

何でもないような事が
幸(しあわせ)だったと思う
何でもない夜の事
二度とは戻れない夜
何でもないような事が
幸(しあわせ)だったと思う
何でもない夜の事
二度とは戻れない夜

第二章では、ロード第一章の歌詞よりも、さらに、具体的に、ファンであった女性の状況が表現されています。付き合っている彼との新しい生活を夢見て、新居を決め結婚式の日取りも決めていました。そこには、二人に数多くあった長い道のり(障害)を乗り越えて探し求めようやく辿りついた「二人だけの場所」がありました。

しかし、そうした小さな幸せをようやく掴みかけた二人でしたが不慮の交通事故とともに、身籠った胎児とともに帰らぬ人になった女性を思う男性の悲しみが表現されています。

 

幸福感と苦悩

日常的な楽しみ幸福感と苦悩との関係は、簡単ではありません。
なぜなら、今日の苦悩が将来の幸せに影響するからです。つまり、幸せに時間軸を入れて考えることが重要です。

例えば、今、チョコレートを食べたり、愛煙家がタバコを吸うといった日常的な楽しみは、将来、肥満になったり、肺を悪くしたりといったことに繋がることは誰でも想像できます。

一流のアスリートは、毎日辛いトレーニングを行うために、日常的な楽しみをストイックに我慢します。例えば、ボクシングはボクサーの体重で階級が決まるため、体重管理が非常に重要なスポーツです。計量前のプロボクサーの減量期間には過酷な食事と水の制限があり、選手たちが苦しむ姿もよく語られています。水抜きによる減量の仕組みは、基本的に身体の水分量を減らすことで体重を減らすというものです。

最近は、水抜きなどは、試合当日の体力も落ちてしまうことから、炭水化物を抑えて体脂肪を落とすことで体重を落とす方法に変わってきているようですが、いずれにしても、好きな食べ物を我慢しなければならないことには違いありません。

坂本光司千葉商科大学教授は、

「夢のある苦労は、苦悩に耐えられるが、夢のない苦労は耐えられない」

と言いますが、その通りです。

目先の欲求を我慢し、より大きな成果のために我慢できる力を測る有名なテストは、マシュマロ実験(1960年代)です。将来より大きな成果のために、自分の感情をコントロールして、目先の欲求を我慢する満足遅延耐性(delayed gratification)についてのもので、結論としては、満足遅延耐性が幼少期に高いほど、将来成功する可能性が高いことが分かりました。

机の上にマシュマロだけが置いてある部屋に子どもが呼び出しました。そして、実験者は「今から私は部屋から離れる。15分後に戻ってくるけど、それまでにマシュマロ食べてなかったらもう一個あげる」と言って離れ、15分以内に食べてしまう子どもと、15分待ってマシュマロを二つもらう子どもを30年後に追跡調査します。20年後にこの二つのグループに追跡調査をすると、マシュマロを食べなかったグループが、周囲からより優秀と評価されていたのです。

ボクサーでもチャンピオンになるような選手は、例外なくストイックです。つまり、満足遅延耐性が強いとも言えます。

ポール・ドーランは、こうした満足遅延耐性というよりも、「やりがい」と「日常的な楽しみ・幸福実感」とのトレードオフで説明しています。つまり、将来に夢があり、やりがいを感じていると苦痛だと感じないで喜びとなると言います。
私は、ポール・ドーランの書籍を読む前から、ドーランと同じような考えに基づいて、次のような公式をつくり、講演などで話していました。

アスリートで、金メダルを取りたいといった強い意思を持っている選手は、コーチからの厳しいトレーニングメニューも喜びと捉えるからです。ドーランがいう「やりがい」と同じです。

アスリートといった特別な人だけでなく、一般の人にもこの公式は適応できます。

ロードは映画にもなりました。あらすじは以下の通りです。

女性は美容院で働く見習いでした。ヤクザで奥さんと一人の子供がいる男性と出会い、その後、二人は恋に落ちました。男性は女性のためにヤクザから足を洗いペンキ屋として働きます。彼は、ペンキ屋で親方に怒られながら一生懸命働き社員になります。その後、二人は一緒に暮らすようになり、赤ちゃんを授かります。奥さんともめたこともあり、子供のことを渋る男性に女性が、高橋ジョージに手紙を書いた後、高橋と女性のやり取りが続きます。女性は、将来の付き合っている男性との幸せを夢見て、節約しながら、一緒に暮らす準備をします。そして、ベビーベッドを買う車で移動している時に、交通事故で他界してしまったのです。既に命がない女性に予約していた結婚式で着る予定だったウエディングドレスを着せて葬式を行う中で、「ここまで俺が変われたのは、お前のおかげだ・・」と号泣してエンディングになります。

好きな人と、春先に一緒に暮らすという夢を見て、男性が、親方に怒られながらも一生懸命働く、女性も節約をしながら一緒に暮らし、お腹の赤ちゃんのためにベビーベッド等を用意していく過程は、経済的に苦しくても、二人にとって決して苦しみではなく、喜びだったのではないでしょうか?

 

夢が叶わなくても幸せだったと感じる理由

「ロード」第二章の歌詞には、
「あの日 あの時 君と出逢っていなければこんなに悲しむ事もなかったと思う
でも逢わなけりゃもっと不幸(ふしあわせ)だった・・・」
とあります。

75年以上にわたり、ハーバード大学のグラントとグルーエックの研究は、2つの集団の身体的および感情的な幸福を追跡しています。対象となったグループは、1939~2014年にボストンで育った貧しい男性456人(グラント研究)と、1939~1944年にハーバード大学を卒業した男性268人(グリュック研究)です。

ハーバード成人発達研究のディレクターを務めるRobert Waldinger教授が行った研究の結論は、「良い人間関係が私たちの幸福と健康を高めてくれるということ」でした。

お金があるかどうか、老後の資金がいくらあるか、どの位、出世したかではなく、幸せな人生の豊かさをもたらしてくれる最大の要因は、「愛」だったのです。

具体的には、頼れる人がそばにいるという環境には、神経系が緊張から解放される、脳の健康が保たれる期間が長くなる、心と体の苦痛が和らげられるなどの効果がありました。逆に、孤独を感じている人は肉体的な健康が早くに衰え、短命である傾向が強いことも、明確に示しています。

そして、友人の多さではなく、身近にいる人たちとの人間関係の質であり、お互いが一緒にいて安心できるか? リラックスでき、お互いが本当の自分が出せるか?だというのです。つまり、他界した彼女のことを本当に愛していたから、幸せと感じていたし、愛が強かった分、悲しみも大きかったのでしょう。

「ロード」第二章の歌詞で、「逢わなけりゃもっと不幸(しあわせ)だった・・」と、ノスタルジックに、失われた彼女に対する心惹かれや恋しさを表現しています。

社会心理学者であるクレイ・ラウトレッジ博士によれば、「孤独を感じたり、何かうまくいかなかったり、何のために生きているかわからなくなったり、自分のしていることに何の価値も見いだせないなどと思ってしまった時は、このノスタルジックな思い出の宝庫のドアを開ければ、自分を慰めることができます」と言っています。
まさに、他界してしまったけど、愛する彼女と一緒に過ごした楽しかった日々が、男性にとって、再び幸せを実感することに繋がっているのでしょう。

私なりの結論を整理すると以下の通りです。

ポイント

  1. 幸せは、時間軸を考慮して、「やりがい」と「日常の楽しみと苦悩」を考える必要がある。
  2. 振り返った後の幸福実感は、お金や出世よりも良質な人間関係であり、「愛」である。
  3. 過去、親しい人と一緒にいた良質な人間関係により、ノスタルジック幸福実感に繋がり、前向きになれる。

 

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藤井正隆

代表取締役社長株式会社イマージョン
大手組織開発コンサルティング会社で、営業責任者及び総研チームを経て、マネージングコーディネーターコンサルタントとして、「事業戦略」、「マーケティング戦略」、「組織変革」のコンサルテーション及びマネジメント研修を担当。 徹底した現場主義で、優良企業年間120社以上を視察訪問研究を継続中。千葉商科大学大学院商学研究科客員教授

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